NEW RELEASE


あれから23年を経て、ぼくは彼に作品を書くことになる。
5月10日に徳間ジャパンから発売される「やじろべえ」である。・・・
ともかくこの歌をぼく自身が惚れているのである。
スティングを好きなように、エリック・クラプトンを好きなように。ぼくにとって好きとは、相手がメジャーだろうが、村一番だろうが、どうでもいいのだ。つまり、好きは好きなのである。この位置に日高さんのこの歌が在るのである。"この歌がぼくの最後の歌のつもりで頑張る"・・・彼はそう云ってレコーディングを終えた。

「日高さん、この歌が始まりだよ。この歌をもって又武道館へ行こうよ」
「いいな、もう1回やりたいな」

人は別々の場所で、それぞれ色々なことをやり、歴史を刻み生きている。会っていない時間がとても重要で、お互いが顔を合わせた瞬間、相手にパワーがあるかないかが判る。無い時は充電すればいい。あると感じられたら、すぐ行動に起こせばいい。それだけの話である。我慢するにも自信がいるし、行動するにも又自信である。迷いが一番悲しい。

「あせらず、1年かけて、この計画を立ててみようよ」
「うん、元気が出てきたな、たきのさん。1万人か、凄いな」
「おもしろいな日高さん。23年前、ご自身でやってきたのに、おもしろいな。その気持ち」

♪生きて人生 やじろべえ ひと息つくには まだ早い
叶う叶わぬ そのまた夢を 追っていこうか 人知れず

サビのフレーズである。この言葉に、彼のブルージィーな渋い声がよく似合う。
彼の生きた時間のすべて、生き方までが映像のように連なって聴こえてくる。胸の中というより、もっと生々しく、そう、胃袋に沁みてくる。そんな彼の歌声を聴きながら、通り過ぎてきた遥か彼方の遠い時間を重ねていた。
こんなにも温かな声をもっている人とは知らなかったし、たくましさと又切なさも伝わる。土の匂いもするし、風のような爽やかさも感じる。そうだ、野草の歌だ。
ひとつの事にただひたすらにつらぬいてきた人には、必ずひとすじの道が切り開かれていると思っている。歩いてきた道こそ歩ける道なのだ。たくさんの枯葉をもって日高さんの道がそこにある。

たきのえいじ


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